8.メロディアス憲章-1

私がネコメタルシティの街並みを見回していると、ボマーが隣で軽く足を止め、目を細めて私を見た。

「この街で演奏するなら、知っておかなきゃならないルールがあるにゃ。それが『メロディアス憲章』ってやつだにゃん。」彼は満足そうに尻尾を揺らして言った。

カシミールがギターを軽く鳴らしながら、少し笑みを浮かべた。「守ってるようで守ってないヤツもいるけどにゃ。でも、それも自由にゃん。」

イーヴルはドラムスティックをくるくると回しながら「大事なのは『リスペクト・コード』だにゃ。お互いにリスペクトを持たないと、いい音楽なんて生まれないにゃん」と、軽くスティックでリズムを取りながら付け加えた。

「リスペクト・コード?」私は、彼の言葉に疑問を持ちながら問いかけた。

「そうにゃ。音楽家同士で敬意を忘れたら、音楽は崩れるにゃん。」ボマーが真剣な表情で答えた。「どんなジャンルでも、どんなスタイルでも、みんな音楽を愛してるからこそ、リスペクトがある。だからこそ、ここでは多様な音楽が共存できるにゃん。」

カシミールが軽くギターの弦を弾きながら、「結局は、自分の音楽だけじゃなくて、他の音も尊重するってことだにゃ。それが『リスペクト・コード』の基本だにゃん」と補足する。

私はうなずきながら、彼らの言葉をかみしめた。確かに、この街では様々な音楽が混ざり合い、調和しているのは、そういったリスペクトがあるからなのかもしれない。

ボマーが、ふと思い出したように「そして、自由に自分を表現できることも大事だにゃん。『フリーダム・オブ・ソロ』っていって、ソロパートは完全に自分のもの。誰にも邪魔されず、自由に音を出せる瞬間なんだにゃ」と、再びリズムに合わせて体を揺らしながら言った。

イーヴルが楽しそうに笑って、「そうにゃん!ソロのときは、俺のドラムが自由に吠えまくるにゃん!」とドラムスティックをくるくると回してみせた。

私は思わず笑いながら、「自由にソロをやれるって、すごく楽しそう。でも、みんながソロばかりだと混乱しちゃわない?」と尋ねた。

カシミールがギターをかき鳴らしながら答えた。「そこで重要なのが『ハーモニー・オブ・コモンビート』だにゃ。ソロは自由でも、みんなが同じビートの中でそれをやるから、バラバラにならないんだにゃん。」

ボマーも頷きながら、「みんなが自分の音を大事にしながら、基本のリズムを共有している。だからこそ、一体感が生まれるにゃん。それが音楽の力だにゃん」と、リズムに合わせて軽く手を叩いた。

私は感心しながら、街の音がどこかで重なり合っていることを感じた。様々な音楽が混ざり合っても、調和が生まれるのはこのルールのおかげかもしれない。

突然、カシミールが少し表情を緩め、「『エコー・オブ・ラストノート』も忘れちゃいけないにゃ。音楽は、最後の一音が消えた後も、心の中で響き続けるものだにゃん。それが、このルールの意味だにゃ」と静かに語り始めた。

ボマーも神妙な顔つきで続けた。「そうにゃん。最後の音まで丁寧に奏でること。それができなきゃ、いい演奏とは言えないにゃん。だから、余韻を大事にすることがミュージシャンにとって最も大事なことのひとつなんだにゃ。」

「音楽が終わっても、その響きが心に残るんだよにゃ」とイーヴルが真剣な顔つきで言った。「それがエコー・オブ・ラストノートの本質だにゃ。」

私はその言葉に深く共感した。演奏が終わった後の余韻が、確かに心に残り続ける。彼らはその瞬間まで全力で音楽を奏でることの大切さを知っているのだ。

ボマーは、さらに続けて「そして最後のルールが『ソニック・ジャスティス』だにゃん」と、少し誇らしげに言った。

「ソニック・ジャスティス…?」私は、その言葉が強い響きを持っていることに気づいた。

「そうにゃん。音楽には正義がある。テクニックだけじゃダメなんだにゃ。心がこもってなければ、聴いてる人に伝わらない。だから、常に誠実でなければいけないにゃん」とボマーは力強く言った。

カシミールがギターを弾きながら、軽く笑って付け加えた。「テクニックだけで誤魔化すことはできないにゃん。音楽を聴いてるヤツは、真実を感じ取る。それがソニック・ジャスティスだにゃ。」

イーヴルがドラムスティックを手に持ったまま、真剣な表情で頷いた。「どれだけ上手くても、心がなきゃ感動なんてできないにゃん。音楽は正義、心で感じるものにゃん。」

彼らの言葉に、音楽が持つ力の本質を感じ取った。それはただのエンターテイメントではなく、真実を届ける手段。彼らが信じる音楽の哲学が、ネコメタルシティを支えているのだということがよくわかった。

「これが『メロディアス憲章』だにゃん。」ボマーが肩を軽くすくめて笑いながら言った。「俺たちは、このルールを守りながら自由に音楽を奏でてるにゃ。」

カシミールはリズムに乗りながら、「自由で、誠実で。音楽ってそういうもんだにゃん。」とニヤリと笑った。

私は彼らの話を聞きながら、この街がただの場所ではなく、音楽を信じ、守る人々によって築かれている特別な場所だと強く感じた。


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