ネコメタルシティに足を踏み入れた瞬間、私は目の前に広がる光景に息を呑んだ。街全体が生きているように感じられる。いや、実際に生きているのだろう。この街は音楽そのもの、音が空気のように満ちている。至る所からリズムが聞こえ、メロディーが流れてくる。そのどれもが、ただの音楽ではなく、この場所に根差した生命そのもののように響いていた。
最初に目に入ったのは、中央にそびえる「ルナティック・ナイト・ホール」だ。ネオンが輝き、その巨大な建物はまるで音楽の神殿のようだった。遠くからでも、ホール全体が光に包まれ、その中心から響き渡る音楽が街全体を包み込んでいるのが感じられた。
「これがネコメタルシティだにゃん。」隣を歩くボマーが自慢げに言った。彼の尻尾が軽く揺れて、リズムに乗っているようだった。
私は足元を見下ろすと、道路には五線譜が描かれていて、そこに音符がまるで踊るように配置されていた。歩くたびに、その音符がかすかに光り、まるで私の足音に反応しているかのようだ。道路そのものがリズムを刻んでいる。耳を澄ませば、遠くで誰かが演奏しているギターや、どこかで聞こえてくるベースの重低音が混ざり合い、街全体が一つの壮大な交響曲を奏でているのがわかる。
「ここでは、音楽がすべてにゃん。」ボマーが続けて言う。「お前が歩いているだけで、この街は反応するにゃん。音楽が街の鼓動だからにゃん。」
私が立ち止まると、空気が少し変わった気がした。街の至るところから感じる音が、どこか優しくなり、まるで私を歓迎しているように包み込んでくれる。ネコメタルシティが私に何かを伝えようとしている…そう感じた。
「見てにゃん、あそこが『メロディアス・アカデミー』だにゃん。」ボマーが指差した先には、大きな建物があり、若い猫たちが楽器を抱えて出入りしていた。アカデミーからは、練習中の音楽が微かに聞こえてきたが、それは一切の乱れもなく、きれいに調和していた。ここで育った猫たちが、街の音楽を紡いでいるのだと直感的にわかった。
「こんな街、見たこともない…」私はつぶやいた。
ボマーは私の言葉に軽く笑い、尻尾をふりながら、「そうだろうにゃん。ここはただの街じゃないにゃ。音楽そのものが生きてる場所にゃん。」と誇らしげに言った。
歩き続けると、リズム・ハイツという高層住宅街に差し掛かった。各フロアからは音楽が漏れ出ており、それぞれが自分の音を奏でていた。しかし、不思議なことに、それらが混ざり合っても不協和音にはならず、まるで大きなオーケストラのように調和している。
「みんなが自分の音楽を持っているんだね…」私はその光景に見入ってしまった。
「そうにゃ。ネコメタルシティでは、音楽がそれぞれの個性を引き出してくれるにゃん。」ボマーが続けた。「そして、みんながその音を大事にしている。だから街全体が調和してるんだにゃ。」
私は目の前に広がる景色に圧倒されながらも、この街がただの場所ではなく、音楽そのものが具現化した特別な場所であることを強く感じた。音楽が街を動かし、住人たちを繋ぎ、そして私をも引き込んでいく。ネコメタルシティは、私にとってこれから何を見せてくれるのだろうか――それを考えるだけで、胸が高鳴った。
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