ボマーたちが「メロディアス憲章」について語り合っているうちに、私はどうしても気になったことを口にした。
「でも…もしそのルールを破ったら、どうなるの?」私は恐る恐る尋ねた。
ボマーは一瞬、いつもの軽やかな表情を引っ込め、真剣な顔つきで私を見た。「ルールを破ると、この街では音楽そのものが君を拒むんだにゃん。」
「音楽が拒む?」私は驚きながらその言葉を反芻した。
「そうにゃ。」カシミールが静かにギターを弾きながら説明した。「音楽に誠実でなくなると、音が君から逃げていく。演奏しても、君の手の中から音楽がこぼれ落ちていく感じになるんだにゃ。それが『サイレント・パニッシュメント』だにゃ。音が出なくなるんだ。どんなに楽器を弾いても、声を出しても、音は全く響かない。それは、この街の音楽家にとって、最大の苦痛だにゃ。」
イーヴルもスティックを回しながら頷いた。「そうだにゃん。『サイレント・パニッシュメント』が下されたら、君の音楽はしばらくの間、消える。それがどれだけ恐ろしいことか、音楽を愛してるならわかるだろうにゃ。」
ボマーは少し重い口調で続けた。「音が出ないこと自体もきついけど、それだけじゃないにゃん。次に来るのは『ディストーション・デイズ』だにゃ。」
私は目を見開いた。「ディストーション・デイズ?」
カシミールは軽く笑みを浮かべながら説明した。「そうにゃ。違反者の出す音が全て歪んでしまうんだにゃ。どんなに綺麗なメロディを奏でようとしても、歪んだノイズに変わってしまう。ギターの音なら、ひどいディストーションがかかって、まるでアンプが壊れたみたいな音になるんだにゃ。歌声も同じで、聴くに堪えない音になるにゃ。」
「それは、音楽が君に背を向けるってことだにゃ。」ボマーは肩をすくめながら言った。「自分の音楽が自分にとって敵になる。それは恐ろしい経験だにゃん。」
イーヴルが重々しく頷きながら、「でも、違反者には再び音楽と向き合うチャンスが与えられるんだにゃ。それが『リズム・リハビリ』だにゃ。」と静かに言った。
「リズム・リハビリ?」私は、その言葉に少し希望を感じながら尋ねた。
「そうにゃん。音楽との調和を取り戻すために、基礎のリズムからもう一度学び直すんだにゃ。これは時間がかかるけど、リズムに合わせて自分を見つめ直すことで、音楽と再び繋がることができる。孤独な時間になるけど、その過程で本当に大事なものを見つけられるかもしれないにゃ。」ボマーは少し静かな声で説明した。
カシミールがギターを軽く鳴らしながら、「『ノイズ・コミュニティサービス』も罰の一つだにゃん。これは、違反者が街のために音楽を使って奉仕するんだにゃ。」と付け加えた。
「奉仕活動って?」私は不思議そうに尋ねた。
カシミールは笑みを浮かべながら説明を続けた。「そうにゃん。街の音楽のために、違反者は裏方として楽器の調律やイベントの準備を手伝ったりするんだにゃ。楽器のケアや、若い猫たちに音楽を教えることで、音楽の本質に対する感謝を取り戻す。これは、音楽がどれだけ大事かを理解させるための罰だにゃん。」
ボマーは少し尻尾を揺らしながら、「奉仕を通して、音楽へのリスペクトを取り戻す。それが『ノイズ・コミュニティサービス』の目的だにゃん。」と、軽く笑いながら言った。
イーヴルがさらに真剣な顔で、「そして『トーン・ジャッジメント』だにゃん。これは、音楽に対する誠実さを特定のミュージシャンたちが審査する。音楽に真剣でないと判断されたら、もう一度最初からやり直さなきゃならないにゃん。」と締めくくった。
カシミールはリズムに合わせて軽くステップを踏みながら、「音楽には正直でなければならないんだにゃ。音楽は嘘をつけないから、いつでも誠実であるべきなんだにゃん。」と微笑んだ。
私は、その厳しい罰と、音楽に対する深い敬意が込められたルールに圧倒されながらも、この街で音楽と共に生きるという意味を、より強く理解するようになっていった。
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